労働者災害補償保険法に基づく保険給付、公的年金制度に基づく年金の給付と損益相殺的な調整

交通事故の被害者が、不法行為によって傷害を受け、その後に後遺障害が残った場合において、労働者災害補償保険法に基づく各種保険給付や公的年金制度に基づく各種年金給付を受けたときは、損害賠償請求との間で、損益相殺的な調整を行うことになるのか、問題となります。

最高裁判所の裁判例には、被害者が、不法行為によって傷害を受け、その後に後遺障害が残った場合において、労働者災害補償保険法に基づく各種保険給付や公的年金制度に基づく各種年金給付を受けたときは、これらの社会保険給付は、それぞれの制度の趣旨目的に従い、特定の損害について必要額をてん補するために支給されるものであるから、同給付については、てん補の対象となる特定の損害と同性質であり、かつ、相互補完性を有する損害の元本との間で、損益相殺的な調整を行うべきものと解するのが相当である旨判示した裁判例があります。 

また、不法行為に基づく損害賠償債務については、不法行為時に何らの催告を要することなく遅滞に陥ると考えられます。
それでは、損益相殺的な調整を行う場合、てん補されたものと評価される時期は、いつの時点と考えることが相当か、問題となります。

最高裁判所の裁判例では、「上記の場合に支給される労働者災害補償保険法に基づく各種保険給付や公的年金制度に基づく各種年金給付は、それぞれの制度の趣旨目的に従い、特定の損害について必要額をてん補するために、てん補の対象となる損害が現実化する都度ないし現実化するのに対応して定期的に支給されることが予定されていることなどを考慮すると、制度の予定するところと異なってその支給が著しく遅滞するなどの特段の事情のない限り、これらが支給され、又は支給されることが確定することにより、そのてん補の対象となる損害は不法行為の時にてん補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整をすることが、公平の見地からみて相当というべきである。」旨判示したものがあります。

交通事故の損害賠償請求において、被害者が労災保険や公的年金制度に基づく給付を受けた場合には、上記のように、損益相殺的な調整がされる場合がありますので、注意が必要です。

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